mirumom シムズ3

シムズ3での自作ポーズによるストーリー創作とプレイレビュー・ポーズ配布等

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【Raindrop】雨は初恋の記憶『後編』

Category: 短編ストーリー   Tagged: シムズ3  シムズ3ストーリー  
前回(前編)の続きです。
相変わらず長いでーす。ヽ(´ー`)ノ お暇な時に読んでね~♥






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「私の恋心に変化が現れたのは・・・そうですね、」
そう彼女は話を続けた。









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彼との出会いからちょうど一年程経った春先の事です。ええ、今年の春ですね。
私は折りしも彼との出会いの日と同じく教授へのお遣いでK大学を訪れました。
なんという偶然。その日もまた予期せぬ春雨が私を足止めしたのです。


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冷たい雨でしたが、私にとっては彼との大切な想い出である春雨。
同じ場で二度目の不意打ちの雨にも忌々しい気持ちは湧く事もなく。
僅かに肩先を濡らす冷たい雫とは裏腹に、私は温かい気持ちで雨を眺めながら雨宿りをしていました。

ふいに近くに聞こえてきた雨水に乗せる足音。


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彼の事に想いを馳せていた私は、意識を現実に引き戻されながらも無意識にその足音と彼の足音を重ねていたようです。

視線はその足音を発する方へ。
その時には自分でも気付かない程の僅かな期待を抱きながら俯いていた目線を上げました。 
その人物を確認する為に。








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私の視界に入ったのは、ええそうです。 彼・・・




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────と、彼にしな垂れかかる同じ年頃の可愛い女性。



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瞬時、消えた雨音



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私がそこに居た事に気付き、驚いたのか歩を止め僅かに眼を瞠った彼。


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私達はお互いに言葉を発せず、しばし視線を絡め合っていたと思います。
『加波君~?』


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数秒だったのか数分だったのかさえ、私には記憶にありません。
ただその瞬間に、肩を濡らしていた春雨の雫が痛いほどに冷たく感じたのを覚えています。

そしてあんなにも温かく大切だった春雨の想い出が崩れていき、雨に新たな印象が芽生えたのを感じました。


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『加波君、どうしたのぉ?ねぇ、行こう?』
『あ・・あぁ、うん・・』


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彼との出会い以降、好きになっていた”雨”を嫌いになった瞬間でもありましたね。



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結局私達は一言も交わさないまま彼はその女性と去って行きました。



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ええ・・・その時の事を思い出すと今でも胸が凍りそうな冷たさに襲われます。


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私はその時のその想いにこれ以上濡らされるのが嫌で、けれども一刻も早くその場から居なくなりたくて
雨に濡れるのも構わず傘を入手する事もなくバス停へと向かいました。



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今思えば、その日はバスを使わない方が賢明だったんですよね・・・
彼との出会いの日と同じ行動をなぞれば、その日との差異に余計痛い想いをするという事に
気付けるほどの余裕もなかったという事でしょうかね・・・。馬鹿でした。



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その日感じた感情を、何と言うのかその時の私にはまだ分かりませんでした。


そして私は雨が嫌いになりました。










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「・・・・・」


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「・・・? 先生、そんな顔しないで下さいよ。ここまで聞いたのですから最後までお付き合い願いますよ?」
「うん、まあ・・・続けて?」
「ええ、では」








え? ・・・その後ですか?ええ、彼とはその後も何度か会いましたよ。
その春雨の日の事はお互い何も言わないまま、それまでと同じ様に。
ああ・・SEXもしましたね。
はぁ?露骨な表現・・・って、もういいじゃないですか。今更ですよ。


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で、彼はそれまで通り優しく私に微笑み触れてくれました。
けれど、私の中で変わってしまった部分があったのです。
彼の側に居ても、離れてしまった心の距離を感じない訳にはいきませんでした。

だってですね、彼に優しく微笑まれると


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その微笑を別の女性に向けている彼の姿が脳裏に浮かびます



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彼に優しく触れられると


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私ではない誰かに触れる彼の姿が浮かびます



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『どうしたの?緑さん』
『・・・・・』



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私ではない誰かと睦みあう彼の姿が



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そうなってしまうと、私にとってただただ温かく幸せで甘やかだった彼との関係が、
一緒に居ても居なくても、胸を締め付ける痛みに感じられるようになってしまったのです。


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消しても消しても浮かんでくるそんな妄想が



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『なんでも・・・ありません』



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『・・今は俺だけを見て?・・・』





こんな想いは初めてでした。
とにかく胸が痛くてどうしようもない。このまま放置して学業にも影響するようでは困ります。
それで私は考えました。


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そう、これが『恋』というものなのかと。
それまで恋らしい恋もした事のない私には分からなかったのです。

恋というのが甘いだけの物ではないのは知識としては知っていました。
ええ、自惚れる訳ではありませんが私、知識だけは豊富だと自尊していますからね。
いえ、知識だけは豊富等というのは決して自慢できるような事ではないとも理解していますけれども。
まあそれは今は置いておきまして。



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しかし、では世の恋する女性はこのような胸の痛みを甘受しつつも恋に花を咲かせているのかと疑問に思いました。
だって、こんな痛みを常に抱えてるようでは日常にも支障が出ると思ったからです。
皆さんは一体どう対処しているのかと不思議でしょうがなかったです。


そこで私は数少ない気の置けない友人に事の顛末を掻い摘んで話して聞かせ、私の考える『恋』
というのが一般的なそれであるのかを尋ねました。









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その時の彼女は・・・そう、今の先生のように苦虫を噛み潰したような顔をしながら言いましたよ。



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『あんた・・・、そんな男やめなさいよ。まぁ、あんたの言うそれも『恋』ではあるけどね、
 もっと素敵な『恋』もあるんだからさぁ・・・』


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『素敵な恋・・・?』
恋ならば、今現在進行形でしているはずなのだけれど。

そんな事を言う彼女の左手薬指には婚約リングが。
つい先日同じ会社の方と婚約したと聞いたばかりでしたね。
お幸せに。というか絶賛幸せ満喫中ですか。そうですか。私と同い年ですよ、ええ。
彼女の口癖は、『能う限り最高の”物件”を手に入れてみせる』でしたかねぇ・・・
そんな彼女の続けた言葉に私は瞠目しました。


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『そう。相手の事を想うだけで世界が薔薇色に染まるようなね。胸の痛みもあるけれど、
 それはあんたの感じてるような痛みではなく、痛みすら喜びになるような甘い想いって言うの?
 愛し愛されてるが故の甘やかな痛み。もしくは片思いなんかで感じる切なく甘い想い。』

流石彼女も文系女子の「元」乙女。話の中身は噛み砕けないけれど耳中りにはなかなかロマンチックな事を仰るなと・・・。
だけれども。


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なんですと?

『・・・あなたの言うその痛みと私の感じてる痛みの何が違うのか分からないのだけれど。』
ええ、分かりませんでした。


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『まーったく。分からないの?あんたの痛みは”嫉妬”でしょうが。恋人でもない軽薄な男への嫉妬。
 しかも恋のスパイスになり得るような”勘違い”という名の嫉妬じゃないよね、それ。ばっちし本気の嫉妬じゃない。
 しかも報われなさそう・・・。そんな痛み嫌だわぁ。辛いだけじゃない、捨てちゃいなさいよそんなまやかしの”恋”
 美しい恋をしなさい、美しい恋を!美しい恋は己をも美しくするっ!!私を見なさい私を!』



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『いくら見た目が良くたって、そんな軽薄軟派な男なんて本気になるだけ馬鹿を見るわよぉ~。大体あんたは・・・』
結婚相手を”物件”等と宣う彼女から出たそんな言葉に胡散臭さを感じつつも私の率直な感想は・・・

そんな。


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『素敵な・・美しい・・・恋・・?』

彼女のその言葉を聞いて、私は衝撃を受けました。
彼女の続けた『これだから男慣れしていないいい歳の女は』
とか『どんだけ初心なのよ』
とかは耳に入っていましたが、その時に私の心はある想いに締められていたのです。


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そう、『私も喜びに胸が痛くなるような素敵な恋がしたい』 と。
彼女の言うように私の痛みはそう、嫉妬でした。結構黒い嫉妬。その時はっきり気付いたのです。
え?『遅い』とか要りませんから黙って聞いてて下さいます・・・?



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「じゃあ私は彼と待ち合わせがあるから。・・・緑、あんた大丈夫?
 何かあったら言いなさいよ?いい歳なんだからちゃんとしなさい!」
「ええ、・・・大丈夫。またね」

気付かせてくれた友人には感謝しつつ、彼女になんとなく借りを作ってしまった事を後悔したりもして、
ええ、彼女は貸した借りはきっちり回収する性質ですから。そんな所がまた小気味良いのですけどね。

とにかく、恋がしたいのです。
彼女の言うような切ないけれど美しく、あんな冷たい痛みではなくきっと温かな想いになれる素敵な恋が。
相手の事を想うと優しい気持ちになれる恋。相手にもそう想って欲しい。

ええ、”いい歳”ですので早くしないと賞味期限切れになってしまいます。








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「・・・・・」


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「・・・? ちょっと・・・先生、”賞味期限”、ここ笑う所ですよ。」
「いや君そんな難題をっ!分かり辛いです・・・!!!」 


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・・・ここまで聞いた感想は。
なるほど。君の気持ちはよく分かる。そうだね、早くした方がいいね。
うん、年齢的にもそんな男に弄ばれてる場合じゃないし・・・何より勿体無い。
──────と、僕は思ってしまった。


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「だから、彼との偽りの恋を終わりにする事にしたんですよ。 まぁ私、恋愛初心者でしたし、
 いい経験させて頂いたと思う事にしました。彼に対して恨みとかありませんよ?ええ本当に。
 だって彼は私を騙した訳でもないですし、私に対する彼の態度に嘘はなかったと思いますし。幸せでした。
 ただ、私の望むものが彼の与えるものと食い違ってしまったというだけの事です。」

「そうなんだ・・・」
まあそれが正解だとしか言えないだろうと僕は思った。


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「それに彼とお別れする事に決めてから、彼の好きだった長い髪を切ったんですよ私。
 見て下さい、結構似合ってるでしょう?すっきり軽くなりました。」

「うん・・・」


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「それから彼が嫌がるから控えてた肌の露出もほら。こんなクソ蒸し暑い時期に露出控えめとありえないでしょう?!
 髪も服もさっぱりで気持ちもすっきりですよ。」

ほらって・・・うん、凄く似合ってます。似合ってますが、


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”クソ”って何だ。君そんなキャラだったっけ?

しかしそう言った彼女は、その”恋”を本当に捨てたんだと納得せざるを得ないような晴れやかな顔をしており、
初めての辛い恋から得た経験をきっと無駄にはしないだろうと思わせる爽快な美しささえ見て取れた。
これが『一皮剥けた』と言う感じなんだろうか。


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そして彼女の話を聞いた後の自分は、それまでとは違った目で彼女を見ている事にも気が付いた。
今話を聞いた後に見る彼女はこれまで知る彼女よりも強く美しい。実体を伴った生身の苛烈な美しさとでも言うのか。

彼女はなんともいい女ではないか。
才もあり聡く品もあり美しく、そこになんとも言えず初心で可愛らしい恋に憧れる乙女の姿が印象に加わってしまった。
だが恋を知った艶も感じられる・・・
そんな彼女に自分は、


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「まぁ、・・・私の話はそんなところですが・・・あ、雨が・・・降ってきましたね。やはりまだ梅雨明けはしてませんねぇ」
「え?・・・ああ・・」

立ち上がり、窓から降りだした雨を眺める彼女の横顔に引き寄せられる。


「ねえ」


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「・・・新しい恋の相手、僕ではダメかな?」
「・・・はい?」

うん、突然の僕の行動に驚くよね?僕だって驚いています。なんで自分は急に唐突にこんな事を言っているのか。
でも、


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「先生・・・?」

彼女の相手だった男が誰であるとか、今日まで彼女にそんな気持ちを抱いた事など無かっただとか、
そんな事を考える前に思わず彼女の肩を掴んでそう言ってしまった。
それ程までに目の前の彼女が魅力的で、これから彼女がしようという”素敵な恋”の相手に自分がなれたら嬉しいだろうと
思ってしまったのだ。


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「何を馬鹿な事を仰ってるんですか。仰ってる意味、分かってますか?先生」

眉を顰めて彼女は言う。いや、ここは頬を染めて欲しかった!
「いや、うん・・分かってる。ふざけてるつもりはないよ。」

「・・・・・そうですか。でもね先生」


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「?!」
振り向いた彼女が僕の肩に手を添えて、そして・・・



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「私、次の恋のお相手には、『モテない』方を希望します。」

なんて彼女は僅かに笑みと艶を含んだ声で囁いた。
ドキリ。


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すっかりその気になっている僕の耳元で囁くのはやめてもらいたいようなそうでもないような。
正直、ドキドキした。
あれ?藤島君・・・こんなキャラ・・・?


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「・・・僕、モテないよ。」
そう言えば、

「ご自身が知らないだけですよ。女子先生学生の間でもかなり評価は高いようですよ?」
なんて言うものだから、その女子学生の中に院生である君は入っていないのかと聞きたくなった。
そして、

「・・・という訳ですので、」


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「渚さん。今までありがとうございました。」
「っ・・・!?」


彼女のその声に振り返ってみれば・・・

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常と変わらぬ朝帰り故に自室で惰眠を貪っていた筈の弟が、何とも言えない顔をしてそこに居た。
昨夜も何処かの女性と何処かで共に過ごしてきたのだろう。
うん、うちでなくて良かった。


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「緑さん?・・・なんで・・・」

・・・ああ、やはりお前だったのか、渚。(はぁ・・・)
この時の僕の気持ちゲージの下降具合を、どうか誰か想像して欲しい。と思う。


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「どこからお聞きになっていたのかは存じませんが、渚さんにはこんな年上でつまらない私と付き合って下さって感謝しています。
 素敵な経験をありがとうございました。私、新しい恋を探します。ああ、これ・・・」


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そう言って出されたのは一本の傘。

「出合った日に渚さんが忘れていった傘です。長々とお借りしてしまってすみませんでした。お返しします。
 私にはもう必要ありませんから。」
彼女の声には一切の迷いも無く、決定事項を冷静に告げる色しか感じられなかった。



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「・・・っ」

彼女と弟の間をチラチラと視線を巡らすも、弟は何も言わずに固まるばかり。
だかしかし、その拳は強く握られ僅かに震えているのが見て取れた。


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「では私はこれで。先生、話に付き合わせてしまいすみませんでした。お陰ですっきりしました。」
「あ、それはいいけど・・・外は雨だよ、送ろうか?」

正直複雑な胸中は脇に追いやり、この期に及んでそんな声を掛けてしまう自分も大概なんだろうか。
因みにこの時点で、放蕩な弟に対する気遣い等という物は僕の中には存在しない。
背後で固まっている弟よ、自業自得だ。恥をしれ。反省しろ。そして後悔しろ。

「いいえ結構です。もう雨は嫌いではなくなりましたから。今みたいな気分の時は、色々雨に流された方が
 気持ちいいと思いますし。」
「そうかい・・・?」

今ここで、これ以上追い縋るのは彼女は好まないだろう。


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そうして彼女は雨の中、傘もささずに帰っていった。
マンションの窓から見えた彼女の後姿は、雨に濡れながらも軽快そうな足取りに見えた。
きっとそれは彼女の吹っ切れた気持ちを表していたんだろうと思う。

きっと、もう雨も嫌いではなくなったはずで。


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吹っ切った女性はかくも強い。男なんか足元にも及ばないくらいに。



────────────



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さて、残されたのは男二人。
彼女の話す”彼”がこの弟である事は途中から気付いていた。残念ながら結構早い段階で。


僕達兄弟の話を少ししよう。
渚の思春期にあたる頃に両親を事故で亡くしてからからは僕が親代わりのようなものだったけれど、
僕にも仕事があり忙しく、現実的な生活面での世話しかしてやれなかった。
こいつの寂しさや思春期特有の感情の起伏に気付いてはいても、僕は僕の生活で手一杯で何もしてこなかった。


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「・・・まぁ、話を聞く限り自業自得だな、渚。」
「・・・てか兄貴、何緑さん口説いてんだよ・・・」
「え、いやまあそれは・・・。でもお前にそんな事を責める資格はないと思うけどな。」


それ故か、渚は寂しさを埋める存在として女性に甘えるようになったのだと思う。
気付けば特定の相手ではない女性とフラフラ交際を繰り返すどうしようもない軽薄男になっていた。
それはある意味仕方がないと兄としても思う所ではあるのだが、まさか藤島君にも手を出していたとは。
お兄ちゃん驚きである。


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「・・・っだって! そりゃ歳の割りに可愛くて初心だったけど俺なんかより緑さんは大人だし落ち着いてるし余裕なのかなって
 ・・本気で想ってくれてるなんて思わなくて、俺が本気になったら逃げちゃうかなって・・・!
 ・・本気だって見せたらウザがられるかなってっ・・・!だから!だけど俺寂しくて・・・!」

なるほどである。いやなるほどではない。馬鹿だこいつは。
彼女の初心で物慣れぬ様子で気付かなかったのか?なんの為の女性遍歴だ。いや、そんな為ではないだろうが。
「これだからガキは・・・」 と独りごちる。

彼女に対してにわかに芽生えてしまった自分の気持ちはさて置き、可愛いくも駄目な弟の本音がそうであるならば
兄としてしてやれるのはこれしかない。
溜息と共に告げてやる。

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「渚、・・・彼女が大切なら今何をすればいいか分かるだろう?考えろ。」
「・・兄貴?」

「まぁこれまでの行いを悔い改めて、激しく己を叱咤し猛省し、とりあえず携帯に入ってるどうでもいい女の番号を消すんだな。
 そして女遊びは止める事だ。だがその前にやるべき事があるだろう。」
「・・・・・」


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「まずは彼女を追いかけろよ馬鹿野郎!捕まえて謝って本当の気持ちを伝えて来い!
 年上だとか何だとか、それは後から考えればいい話だろう?手放したくないなら、なぁ・・・渚!」

これだけ言っても動かないならもう知らん。


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「・・・!!」


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そう言ってやれば渚は飛び出して行った。
「渚!せめてズボンは履いて外へ出なさいっ!」

親代わりの兄として、至らなかった事へのせめてもの罪滅ぼしとしては上々ではないだろうか。
頑張れ、弟よ。



──────



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「やれやれ・・・」

だがしかし、彼女の先程の様子を見るに彼女はもう弟の事は過去の物にしてしまったのではないかと兄は思う。
彼女は先を見つめている。彼女もなかなかの意地っ張りのようだし、一筋縄でいくのか否か。
渚の取り付く島はあるのだろうか?


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まあ撃沈したら、酒でも奢って慰めてやろうか。そしてこれまでの放蕩ぶりを嫌と言うほど説教してやろう。
その後は・・・

彼女に対して自分がアプローチする事を誰に咎められる謂われはない。
────と、弟と教え子の”恋バナ”に巻き込まれた僕が思うくらいは許して欲しい。


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「さて、論文の纏めでもしてしまおうか・・・」


弟と彼女がどうなったのか、にわかな僕のこの想いはどうなったのか。
・・・それはまたの機会に。


(了)




短編ストーリーにお付き合い下さいましてありがとうございました(*´∀`*)
アスモデウスの方がシリアスで割と重い話なので、たまにこういう息抜きストーリーが書きたくなります。
前編のあとがきで書いた『何か気付いても触れないで欲しい』はですね、彼=渚 というだけの事でした(^^;)
おそらく気付いてる方が多数だとは思ったのですが、一応は最後の山場なので内緒にしてもらいました(笑)

この後の後日談+αは書くつもりです♪(多分また前後編になるかな?) 
次はアスモデウスの続きを書く予定ですが、今月ちょっと忙しいので「今月中に」と言っておきます(´∀`;)
ストーリー以外の更新はしますよー。(ポーズとか?)

いつもコメント・拍手等をありがとうございます。とっても励みになっています^^
拍手コメントのお返事は、特別な場合以外は拍手コメントお返事ページ(TOPから行けます)にてさせて頂いておりますので
該当の方はご覧頂ければと思います。
それとストーリー以外はコメント欄を閉じておりますので、コメント欄から長めメッセージを送りたい場合等用に
TOPページのコメント欄を開いておきます。何かあればそちらを鍵コメ等でご利用下さいね。(暫定的にですが)

投票も変らずありがとうございます(*´ω`*)ロンの票が伸びすぎてて・・・ビックリした!(笑)
アニスを抜くとはどういう事だ???彼は何かを期待されているんでしょうかね・・・ 頑張れw

では今回はこの辺で♥ 閲覧ありがとうございました(*^-^*)
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テーマ : The Sims3    ジャンル : ゲーム

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