




RRRR RRRR RRRRR

「もしもし・・・ああ俺、ジュールだよ。」

「──────、───・・・───」
「・・・・・───。──────、・・・・・───・・・・・」
「は?!」

「今なんつった?!」

「ジュールお前いきなり何を」
「グレン?」

「メロと・・お前が・・・?!」




「さっきのはどういう事だよ母さん!」

「俺の父親が生きていてツインブルックにいるって!?
親父は死んだって言ってたよな?何で今更そんな話になるんだよ!!」

『ごめんよジュール・・・』

『母さんね、若い頃その町で家政婦をして働いていたの。隣町の生まれだったから・・。
それでその時働いていたお屋敷の旦那様と情を交わす仲になってあんたを身籠って・・・』

『だけど家庭のある人だったから、あたしは何も告げずにその町を去って今のこの町へ移って
あんたを一人で産んだんだよジュール。』

「なっ、何でそんな何も告げずに、いやそうじゃなくて ・・何で俺を産んだんだよ!一人で産む事なかっただろ!?」

『だって・・愛していたから。その人の事もその人の子で、何よりあたしの子であるお腹のあんたの事も。』

「~~~~~~~~~~!いやいいよ!だって産んでくれてなきゃ俺は今いないわけだしそこは産んでくれなきゃ困る!」
テンパり過ぎて何を言っていいかわからねぇ
「いいけどさ!そこまではいいけど何で、何で今言った!?」

『あんたが・・・ツインブルックに行くと聞いて、あの人は何も知らないけどあんたにとっては父親だよ。
今言わなきゃ二度と会う機会はないかもしれないじゃない?』
『会いたくないとあんたが言うならそれでも構わないけどさ、あんたには知る権利があるだろうって思ったんだよ。
そろそろ、そんな歳だろう?あんたも』
「・・・っ勝手な事を」
『そうだね、あたしの身勝手であんたには本当に可哀そうな事をしたよね、ごめんねジュール。あとはあんたが決めなさい。』

「・・・明日帰るつもりだったし、急過ぎて何も決められないけど話は分かった。
で?親父は何処のなんつう人なんだよ。一応聞いておくよ。」
『・・・その町のね、名の知れた家だからすぐ見つかるよ。リンガーソンっていう病院の家系だよ』

「・・・は?」
鼓動が早くなる

『ん?今もツインブルックでは唯一の大病院だったはずだから分かると思うけど。そっちで名前くらい聞かなかったかい?』

『大きな病院を経営しているリンガーソン家。ああ、確かあんたより少し年上の姉妹がいて名前はメグと』
ピッ
携帯を持つ手が震える

俺は、今・・・何を聞いた?

「・・・・・嘘」
「だろ・・・・・・・・・?」
そんな話、信じられるはずがない

俺の父親がリンガーソンの親父さんだというのなら、
俺とメロは・・・

・
・
・
・


遅いなジュール、やっぱりお母さんに何かあったんじゃ・・・
キィ

「ジュ、ジュール!随分遅かったけど大丈夫?何かあったの?」
「・・・・・いや・・・・・」

「だって・・・様子がおかしいわ?何か困った事があったんじゃないの?」

「・・・・・・・・・・・」
「ジュール?」

「・・心配・・させたね、ごめんメロ。 大丈夫だよ」

「そう・・・なの?本当に大丈夫?」
「うん」
「・・・そう。なら良かったけど・・・」
「俺、シャワー浴びてくるね。・・・待ってて?」
「え、ええ・・」

ジュール・・・・・?




「ごめんね、待たせちゃった・・・?」

「あ、ううん・・・ あの、ジュール・・・、私・・・もう、待ってなんて・・・言わないわ。
だ、だから・・・」

「メロ・・・」
さっきまでだったら・・・嬉しかったはずのこんな可愛いメロの言葉に様子。
なのに・・・

「メロ、・・・本当にいいのかな?」
「ジュール?」
「俺なんかがメロに触れて・・・俺のものにして・・・いいのかな」

「ジュール」

「うん、触れて・・・?」

「私をジュールのものにして。 私がそうして・・欲しいから」

「・・メロ・・・」

やっと手に入れた、こんなにも愛おしい人を・・・

「愛してるよ、メロ」
諦めるなんて俺には・・・

「私も・・・愛してる」
できないよ



「メロ・・」
「ん・・」

「ジュ・・っ」

「好きだよ・・メロ、好きだ」
「あっ・・・」

「ジュール・・・」
「・・・・・・・・・」

「・・・・・?」

ポツッ

「・・・え?・・」

「ジュ・・・」

「ジュール、ど・・・どうしたの!?泣いてるの?」
「どうして・・・」

「どうしてなんだよ・・・・・他には何もいらないのに」
一番欲しい物だけが絶対に手に入らないだなんて。
俺が犯した罪は、そんなに重かったって言いたいのかな、なぁ神様・・・
「メロがいない人生なんて・・・意味がないのに・・・
それでも生きてかなきゃいけないなんて、今の俺には死ぬより辛いよ・・・」
「ジュール・・・」

「ごめんね、ごめんメロ・・・ごめん・・・」
「・・・話を・・・聞かせてくれる?」
「・・・・・うん」


「ごめんな・・メロ。俺、メロにはもう喜びの涙しか流させないって誓ってたのに・・・
また悲しみで泣かせちゃってるな・・・」
「・・・・・」

「まさか、姉弟だなんてさ、・・・他の事ならいくらでも抗ってみせるのにっ、・・・こんなのあまりにも」

「っくそ・・・っ!」
「ジュール」

「いやよ。 私嫌・・・」

「っメロ、」

「・・・」

「私達、やっと・・やっとここからなのに・・どうして?どうしてなの・・?う、ううう・・」
「・・・・・」

「メ・・「いや・・・嫌よジュール、いやっ・・・ きっと、きっと何かの間違いよ」
『何かの間違い』
それは、俺が今一番欲しくて堪らない言葉だ

「・・・・・メロ」

このまま・・・・・
今のお互いの感情の昂ぶりのまま、メロを俺のものにしてもいいんじゃないか?
俺の中の悪魔が甘言を囁く

メロも姉弟であるという嘘みたいな話をまだ受け入れられてはいないみたいだし・・・
俺たち二人以外他人なんて関係ない。
姉弟で結ばれたって誰にも気付かれない、何も言われない場所まで逃げちゃえば・・・
俺達さえ黙っていれば・・・
なあ?そういう事だろう?
今の俺には神より悪魔が味方に付いている方が都合がいい。

俺もメロも罪を犯してきた汚れた人間だ。
人生で一番欲しいものが目の前にあるんだ。今更罪を重ねたところで別に・・・
メロを道連れに、地獄まで永遠に二人だけでいたっていいんじゃないか?
だって、だって譲れないんだこの想いだけは。

「メロ、」
悪魔の囁きに、そう自己的な汚れた覚悟を決めて見上げてかち合ったメロの瞳。

彼女の悲しみに濡れた瞳は・・・それでも美しく澄んだままだった。
ああ、俺は・・・
これまで自分の犯した罪に苦しんで、やっと明るい未来へと歩み出そうとしているメロの顔を
また曇らせたまま生きていこうというのか?
姉弟で結ばれるなんて罪深い業を一生背負わせて、メロが幸せでいられるわけがないのに

離したくない、離したくないよメロ
このまま誰もいない場所に連れ去ってしまいたい

だけど・・・・・

「メロ・・・・・」

「メロ・・・愛してるよ。俺の人生で誰よりも一番愛してるよ。
これまでも、これからも。」
「ジュール・・・」

「この気持ち、この愛は・・・・俺達が姉弟だとしたって変わらない。
誰よりも・・永遠にずっと俺の一番の愛はメロに・・・・・あげるよ、っあげるから・・・」

「っ・・ジュ・・ジュール・・・!」
「さっきから・・・泣かせてばっかだな。でも、」

「・・・今だけは、今夜だけは泣かないでなんて俺、言わないよ・・・」
「う、ううう・・・・・っ」
今の俺もメロも、どんだけ泣いたって、悲しんだっていい資格を持ち合わせてるだろう?
そうでなきゃ、この気持ちも想いも何処へどうしていいのか俺には全くわからない・・・
こんな事で泣きたくなんて、泣かせたくなんて・・・・・なかったのに

「俺、愛する人と父親を・・・いっぺんに失くしちゃったんだな。
だ、だけど、これから先もずっと・・・男と女としてじゃないかぞっ、家族としてのっ・・・」
「ジュール・・・」

これまでずっと、いつでも私の事だけ見てくれて愛してくれて支えてくれたジュール。
そんなジュールを私も愛した。
きっと今一番苦しんでるのはジュールなのに・・・
こんな運命の残酷さに、悔しくないわけも悲しくないわけもないのに・・・
私の為に一生懸命宥めて慰める言葉を探して話してくれている。
「ジュール・・・ごめんねジュール、あなたにそんな事を言わせてしまって・・・」
そこにはあなたの大きな愛を感じる。私を守ろうとしてくれている。
ごめんねジュール、辛いのはあなたも同じなのに・・・
私自身、まだ受け止められないし受け止めたくはない。けれど、あなたが私を守ろうとしているから、だから
だったら私もあなたに愛を伝えなくちゃいけないのね

「ジュール、私も愛しているわ。・・例え私達が男女として共に歩む道はなくなったとしても、
・・・あなたの言うように、永遠に繋がっていられる姉弟という絆。
それはとても強い強い絆なの。死ぬまであなたと・・・繋がっていられるんだもの」

「姉弟・・・家族の絆・・・・」
「そ、そう・・・思わないと」

「・・・っ悲しすぎる・・・っ」
「メロっ・・・!」

俺達は、運命の前には・・・あまりにも無力だ。
運命は巻き戻らない。

だったらこの運命にも意味があるんだろう。
目指していた道と違う道を歩む事になったその先には・・・
誰もが納得できる明るい未来が待っていると思っていいんだよな?
そうでないと俺は

「メロ・・・弟になる前に、男としてメロを愛してた俺の・・・
最後のキスをしても・・・いい?」

「・・・うん」

そうか、
さよならを言わなきゃいけないのか。 俺の恋心に・・・
だけど、

愛していた・・・
本当に心から、初めてこんなにも誰かを愛した。
愛しているよメロ。
これからも・・・永遠に




「朝・・・か」


ごめんな、メロ。
今はまだ一緒に居てメロの顔を見ているのは・・・辛いや
・
・
・
・



「ごめんメロ、先行くね」





「グレン、」

「早かったな」

「最終便ギリギリだ」
やっぱり来てくれたな、グレン。
俺の為ではあったんだろうけど、これまでメロの事では頑なに動かなかったお前だった。
だけど流石にあれだけ煽れば動かない訳にはいかない男だって俺は知ってたから、
こうなってしまって・・・
今俺は傍にいてあげれないから。
・・・俺にはこうして朝を迎える事が、どこかで分かっていたから。
そうしたらもう、
メロを任せられるのはお前しかいないから
来てくれて良かったって心から思うよ、グレン。
NEXT→65②
閲覧ありがとうございました。
今回も長くなっちゃったので①と②に分けます。
②もほぼ完成してるので近いうちにアップします。
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このブログは妊娠中に見つけて読み始めました。もう子供は6歳です(笑)2018年に更新が途絶えてからはすっかり忘れていたのですがたまたま今日思い出して、タイトルも覚えてなかったのですがなんとか見つけることができました。何話か前にもコメントしてました。グレンとのゴタゴタがある時からずっとジュールとメロのハッピーエンドを望んでいたので、一話前でようやく幸せになれたねって思ってたのに、、、気持ちがどん底に落ちました(笑) 物語の作り方が旨すぎて脱帽です。このあとどうなるんだろう、、最新話見たいけど見たくない複雑な気持ち。
どちらにしろ更新ありがとうございます。また最初から読み直すという楽しみもできました!